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ハチ博士のミツバチコラム(38)女王物質

女王バチを女王たらしめているものは何でしょうか。9-オキソデセン酸(9-ODA)を主成分とする女王物質がそれであると言えます。女王はいつも護衛の働きバチに囲まれ、護衛は女王の身体をなめ、触角で触れる。この時に女王物質が授与され、護衛は次々と交代して他の働きバチに接触し、女王物質は巣の中の働きバチ全体に伝達されます。

 女王物質が巣全体に行きわたることは、女王が安泰であるというメッセージになり、群は安定化します。女王物質は働きバチの卵巣の発達を抑制して産卵させないし、次の女王を育てる王台を作らせないようにします。また、女王物質は働きバチを刺激して新しい巣板を作らせ採蜜などの労働を促し、交尾の際には雄バチを誘引する性フェロモンとして機能するなど、群全体が生き生き活動する元になるのです。

 もし、女王が年老いて女王物質を生産できなくなったり、群が大きくなり過ぎて女王物質が群全体に行きわたらなくなったらどうなるか…。女王物質を受け取らない働きバチは王台を形成し、新しい女王を誕生させようとします。女王が居ない群は滅亡するから新女王と交代させようとするのです。一方、分蜂は群が大きくなり過ぎた時に王台が作られ、新女王が誕生する直前に女王が自ら巣を出て行く現象です。このように女王物質は活力ある女王をアピールする物質ということになります。人間の場合、女王物質に相当するものはありますか?あるとしたら、それは何でしょう。


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