ハチ博士のミツバチコラム(37)女王バチ


 女王バチは数万匹にもなるミツバチの群の中に1匹しか居ない特別な存在です。働きバチの4倍の体重、50倍程の寿命を持っていますが、卵の段階では両者の違いはありません。女王バチと働きバチの分れ道は何処なのでしょうか。女王バチの卵は王台というフジツボ状の広い特別な巣房に産み付けられるのに対し、働きバチの卵は六角形の狭い普通の巣房です。幼虫になると、女王バチにはローヤルゼリーがふんだんに与えられるのに対して、働きバチには最初の2,3日、ローヤルゼリーが与えられ、その後は花粉中心の餌に変わります。餌の違いが両者の違いにつながることは早くから予想されていたのですが、2011年に鎌倉昌樹博士がローヤルゼリー中のロイヤラクチンというたんぱく質が女王バチへの分化に関与していることを発見しました。

 働きバチの仕事は沢山あるのですが、女王バチの仕事は卵を産むことです。春から夏にかけての最盛期には毎日千個以上の産卵をし、産んだ卵の総重量は自分の体重に匹敵するそうです。あたかも群全体を監視し、統率しているように思われていますが、実態は来る日も来る日も産卵マシーンの役割を果たしているだけのようです。分蜂の時期には、現女王は新女王が羽化する直前に群の約半数のハチ達と共に巣を飛び出ます。王台が一つなら問題はありませんが、通常、複数の王台が準備されます。最初に羽化した長女の女王バチは、すぐさま妹達を抹殺しなければなりません。群には女王は1匹と決まっているからです。病弱な長女の場合には妹に逆に殺されます。年老いて産卵できなくなると、王台が準備され、現女王は働き蜂に殺されて、新女王と交代します。フーッ、何と熾烈な権力闘争。女王も本当はつらいのです。何も言わないけれど…。

(中京しんぶん 8月15日号掲載)