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ハチ博士のミツバチコラム(36)ドローン


 最近、何かと世間を騒がしているドローン(drone)ですが、元々は雄のミツバチをさす言葉です。droneを辞書で引くと、「遠隔操作やコンピュータ制御で飛行する無人飛行機」という説明の他に、「怠け者、ごくつぶし」という説明がのっています。雄ミツバチの羽音はブンブンとうるさいのですが、あの飛行物体の騒音は雄ミツバチの羽音に似ているので、ドローンの名が付いたのではないかと想像します。

 もう一つの「怠け者、ごくつぶし」は雄ミツバチの生態に由来しています。雌の働きバチが一年中誕生して、忙しく働きまわるのに対して、雄バチは春から夏にだけ生まれて、女王バチとの交尾以外は何もしません。毎日働きバチから口移しで蜜をもらい、交尾に備えて雄バチの集結場所に飛んで行き、女王バチとの交尾のために待機します。運よく交尾できた雄バチは、その場で華々しく死ぬのですが、交尾できなければ巣に戻り、監視の目を盗んで蜜を吸ったり、ゴロゴロして時間をつぶすなど無為徒食の毎日を過ごします。

 雄バチは毒針も持たず、外敵と闘って群を守る兵隊の役目もしません。このように役に立たないと見なされてdroneは「怠け者、ごくつぶし」という意味になったのだそうです。交尾の季節が終わる晩夏には、口移しの蜜ももらえなくなり、段々と弱って、最後には働き蜂に巣から追い出されてしまうのです。自分で訪花して蜜を集めることができない雄バチは、最後は野垂れ死にする以外に道はありません。ああ、男はつらいよ、ミツバチ編!

(中京しんぶん 2015年7月15日版掲載)

このコラムは京都市民しんぶん中京区版に2012年8月より連載中です。


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